生産量世界第4位のインドネシアのコーヒー栽培は、今から300年以上前に始まりました。
コーヒーの起源とインドネシアのコーヒー栽培に関連する情報を年代順に並べ、まとめてみました。
「アラビアからインドへ」
古くは1000年以上も前にさかのぼります...
・カルディの伝説 （9世紀のエチオピア）
・シーク・オマールの伝説 （13世紀のイエメン）
・シェーク・ゲマレディンの伝説（15世紀のイエメン）
など、コーヒーの起源とされる伝説はいくつかあるようです。
森で偶然見つけた赤い実を食べたり、スープにすることで、眠気が取れ気分が爽快になったという話が伝えられており、最初は眠気覚ましの薬として広まったようです。
エチオピアはコーヒーの木が最初に発見された場所、イエメンはコーヒーという飲み物の発祥の地と言われています。
種子を煎ってそれを挽いて使うようになったのは13世紀と言われています。
1510年にはカイロに世界初のコーヒーを提供する店ができました。
17世紀にインドのイスラム僧侶のババ・ブーダンが、厳しい監視をかいくぐり、イエメンから7粒のコーヒーの種子をインドに密かに持ち帰りました。
そのうちの1粒が発芽成長し、やがて実をつけたと伝えられています。こうしてインドでコーヒー栽培が始まりました。
これはオールドチックという品種と言われ、アラビカ種の原種の一つである「ティピカ」のルーツと言われています。
【インドからインドネシアへ】
1696年、当時オランダの植民地だったバタビア（現ジャカルタ）総督に、アラビカ種のコーヒーの苗が数本贈られたことが始まりです。
この苗は後に水害で全滅してしまいますが、1699年に苗が再度インド南部のマラバールから船で運ばれてきます。
この苗木はジャワの農園で無事育ち、のちにオランダ領東インド諸島の全てに広がっていきます。つまりこの苗木がインドネシアのアラビカ種の先祖ということになります。
【インドネシアから世界へ】
1706年にバタビア周辺で栽培されたコーヒーの最初の積み荷が、苗木1本とともにアムステルダムのオランダ東インド会社に出荷されました。
ジャワ各地の農園で無事育ったアラビカ種は1850年頃にはスラウェシ島、1888年にはスマトラ島で栽培が始まるなど、インドネシア全土に拡大しました。
さらにオランダを経由し、インドネシアのアラビカ種が世界中に広がっていきます。
本格的に栽培が始まるのは、1830年にオランダ領東インドに導入された強制栽培期以降です。
プランテーションによる大規模な栽培と生産が始まります。
一方、ポルトガルの支配下にあった東インドネシア、東ティモール、フローレス島などでもコーヒーの生産が行われるようになっていました。
ただしポルトガルが入手したアラビカ種の苗木とオランダが入手した苗木は種類が異なっており、これがインドネシアのコーヒーの多様性を生むことに繋がったと考えられています。
19世紀後半に世界的にサビ病が流行し、世界各地で壊滅的な被害をもたらしました。
インドネシアでは当初はアラビカ種のみが栽培されていましたが、1876年にサビ病でコーヒーの木がほぼ全滅してしまいます。
※サビ病とは、コーヒー栽培で最も恐れられている病害のひとつです。サビ病菌は強い伝染力を持っており、葉の裏側に付着すると菌糸を伸ばして葉肉を浸食し、2～3年で木が枯れてしまうと言われています。
サビ病による被害を受け、インドネシアではアラビカ種から他の品種への移行を試みました。
まずリベリカ種を植えましたが、同じようにサビ病の被害を受けてしまいました。このため病気に強いロブスタ種を栽培するようになりました。
しかし、インドネシアの一部にはアラビカ種のコーヒーの木がわずかに生き残っていました。
サビ病の流行を経て、現在はインドネシアのコーヒー生産量の90％をロブスタ種が占めています。
その一方で、サビ病の流行に負けずに生き抜いたアラビカ種のコーヒーの木の子孫が、今も大切に育てられています。
多くの人たちの努力により、インドネシアのアラビカ種は復活を遂げました。
「マンデリンコーヒー」や「トラジャコーヒー」などの世界に誇るコーヒーがその例です。
また、世界的に有名なコーヒーチェーンで採用されるなど、インドネシアのアラビカ豆は世界中で注目されています。
※余談ですが、アメリカのスラングでは"java"（ジャワの英語表記）は、産地に関係なく"コーヒー"という意味です。
インドネシアのコーヒー栽培が、コーヒーの歴史の中でいかに重要な地位を占めてきたかがよくわかります。
コーヒーの木を守り、栽培に尽力された方々に敬意を表したいと思います。
※出典：ウィキペディア英語版
「Coffee production in Indonesia」
（https://en.wikipedia.org/wiki/Coffee_production_in_Indonesia）
「History of coffee」
（https://en.wikipedia.org/wiki/History_of_coffee）